消費者庁消費者制度課(消費者裁判手続特例法担当)意見募集担当 御中

 

2021年11月3日    消費者ネットしまね 代表 朝田良作

「『消費者裁判手続特例法等に関する検討会報告書』に関する意見」

 

「第2 1. (1)請求・損害の範囲の見直し」に対する意見

(意見の内容)

慰謝料についても本制度の対象とすべきです。また、慰謝料以外に対象外とされている損害(いわゆる拡大損害、逸失利益及び人身損害)についても、他の個別の特別法との調整をはかり、本制度の対象とする方向でさらに検討すべきだと考えます。

(意見の理由)

本制度は、経済界から示された濫訴の事態を惹き起こすことへの強い懸念の中、2013年に制定され、2016年10月から施行されました。しかし、その懸念にも拘わらず濫訴の事態は起きておらず、むしろSDGsとの関連で消費者志向経営に向けた事業者の取組の必要性と重要性を考えると、財産的損害だけでなく、精神的損害である慰謝料についても、本制度の請求・損害の範囲に含めるよう見直し、消費者の救済を広げていく必要があると考えます。

検討会でも議論されていますが、慰謝料についても、被害者に共通する客観的な事情を考慮して一律的に算定することは可能であり、画一的に算定できる慰謝料であれば、請求・損害の対象としても簡易確定手続において、対象債権の存在と内容を適切かつ迅速に判断すること(支配性)が困難ではないと考えます。したがって、慰謝料をも本制度の対象とすることにより、真の意味で消費者の「泣き寝入り」とはならいような被害救済の対象とすべきです。

また、引き続き検討すべき課題とされていますが、慰謝料以外の損害(いわゆる拡大損害、逸失利益及び人身損害等)についても、集団的な消費者被害救済という制度の趣旨を踏まえるとともに、その他の特別法との調整をはかり、本制度の対象とするよう早急に検討を開始する必要があると考えます。

「第2 1. (2)被告の範囲の見直し」に対する意見

(意見の内容)

共通義務確認訴訟においては、故意または重大なる過失による不法行為責任を負う事業者が被告に該当するだけでなく、悪質な事業者の代表者と実質的な支配者である個人をも被告に加えるべきだと考えます。

(意見の理由)

 悪質事業者の中には、法人の財産は代表者や実質的な支配者である個人に移転され、散逸・隠匿してしまう事例があります。財産が散逸・隠匿されてしまうと、被害回復の提訴をすること自体が非常に難しくなったり、仮に事業者の資産を仮差押えして提訴し勝訴したとしても、回復すべき損害賠償額を大幅に下回ってしまうなどの事態を招く危惧があります。法人だけでなく代表者と実質的な支配者の個人を被告にすることができるよう、被告の範囲を見直すべきだと考えます。

「第2 2. 共通義務確認訴訟における和解」に対する意見

(意見の内容)

法第10条は、共通義務確認訴訟において、和解を認める対象を共通義務の存否に限定する旨定めていますが、同条を削除し、和解内容に係る制限をなくし、様々な類型の和解が可能となるよう規定を整備すべきだと考えます。

(意見の理由)

和解できる内容の範囲を拡大することで、消費者被害の解決の選択肢が広がり、紛争解決の長期化を避けて早期解決をはかることが可能となり、消費者にとっても事業者にとっても有益であると考えます。

また、適正な和解が行われるよう、想定される和解の類型や当該和解類型における留意事項等をガイドライン等で明確化することを通して、本制度が広がり普及すると考えています。

「第2 3. (2)役割分担と費用負担の見直し」に対する意見

(意見の内容)

報告書においても指摘されている通り、手続追行主体として特定適格消費者団体が対象消費者に通知・公告をする役割は維持されるべきですが、簡易確定手続の役割分担や費用を見直し、通知についての被告事業者の役割と被告事業者に負担を求め得る額の算定基準を定めるべきであると考えます。

(意見の理由)

通知・公告費用については、共通義務確認訴訟で法的責任が認められた後であり、被害回復のための手続きは、本来は被告事業者が負担すべきであると考えます。特定適格消費者団体の消費者への認知がまだ低い(特に(特定)適格消費者団体がない地方・地域においては消費者の認知度は極めて低い)ことから、消費者が授権の通知を受けたとしても、内容をよく確認しない、または信用できず対応しないという可能性があります。事業者が対象消費者への連絡手段に関する情報を持っている場合には、事業者から対象消費者へ個別に連絡をする方が効率的であると考えます。

また、対象消費者の個人情報が保管されていない場合など、被告事業者が通知の役割を果たせないときには、その事情に応じて通知・公告に要する費用として、被告事業者に負担を求めることができる額の算定基準を定めるべきであると考えます。現行制度では通知・公告等に費用がかかるため、特に少額補償の場合には訴訟に至らない事案がある状況を踏まえると、この観点からも被告事業者が負担する仕組みを検討すべきです。

なお、この基準が定められることにより、原告と被告が通知・公告費用の負担等について協議できる環境が整うことも期待できると思われます。

「第2 3. (3)情報提供の実効性を高めるための方策」に対する意見

(意見の内容)

裁判所の関与の下で、事業者が保有する対象消費者の情報を共通義務確認訴訟が終了する前の段階で保全する仕組みを設けるべきであると考えます。

(意見の理由)
 東京医科大学の事案では、事業者から開示された対象消費者に関する情報が一部にとどまったことから、特定適格消費者団体による通知ができた範囲が限られるという事態を招いたと聞きます。こうしたことを防ぎ本制度の円滑な活用を促すために、裁判所の関与の下で、事業者が保有する対象消費者の氏名や住所または連絡先の各情報を、共通義務確認訴訟が終了する前の段階で保全する仕組みを設けるべきです。

「第2 4.(1)特定適格消費者団体の情報取得手段の在り方」に対する意見

(意見の内容)

  • 適格消費者団体との連携協力関係に係る明文規定を設けるべきです。さらには、特定

適格消費者団体による消費者被害の回復の実効性をより高めるためには、特定適格消費者団体も適格消費者団体も存しない地方・地域で活動しているその他の消費者団体とも連携協力することとそのあり方につき、法文上でなくても、例えば情報収集手段に関するガイドライン等において明確にしておくべきであると考えます。

  • 行政機関が保有する情報の提供に関しては、特商法と預託法において、特定適格消費

者団体への情報提供が進められようとしていますので、その運用実績を踏まえて、他の法令についても検討すべきです。

  • 事業者の財産に関する情報の取得に関しては、他の現行法令との関係も踏まえ、さらに具体的に検討すべきです。

  • 第三者の協力を得る仕組みについては、どのような第三者に対して、どのような範囲で情報適用に係る協力を求めることができるのか等の問題も含め、さらに具体的に検討すべきであると考えます。

(意見の理由)

  • 本制度の活用の推進(広がり)と実効性を高めるためには、消費者被害のアンテナ

機能を持った他の消費者団体との連携協力の下で、本制度の運用に必要な情報を取得することも必要であると考えるからです。

  • 行政機関が保有する情報提供は、本制度の実効性を高めるからです。

  •  多数の対象消費者被害の回復を実効的にはかるためにも、また、本制度の活用を促進するためにも必要であると考えるからです。

  • 事業者が対象消費者に関する情報を保有していない場合に、特定適格消費者団体が当該事業者以外に対象消費者に係る情報を保有する第三者の協力を得て、情報提供を受けることが可能となれば、消費者被害の回復の実効性を高めることと本制度の活用を促進することにもつながると考えるからです。

「第2 4.(2)時効の完成猶予・更新に関する規律の在り方」に対する意見

(意見の内容)

共通義務確認訴訟の和解が成立した場合も含め、特定適格消費者団体による手続が終了した後6か月間は自ら提訴や交渉ができる期間を確保すべきです。

(意見の理由)

 本制度にあっては、多くの対象消費者が共通義務確認訴訟の帰趨を見守っており、このような状況においては、共通義務確認訴訟の却下、または特定適格消費者団体が簡易確定手続を申し立てなかったり、取り下げたりしたときには、個々の消費者の請求に係る事項は審理されていないも拘わらず、消滅時効が完成してしまう対象消費者が多く発生するおそれがあるからです。

「第2 4.(3)簡易確定手続開始の申立義務を免除する範囲等」に対する意見

(意見の内容)

 簡易確定手続開始申立義務が免除される「正当な理由」に関する解釈を明確にすべきです。また、簡易確定手続の申立期間を延長・伸長できるようにすべきです。

(意見の理由)

 上記の「正当な理由」につき解釈により明確にすることより、共通義務確認訴訟の対象事案を広く捉えることができるようなります。また、簡易確定手続の申立期間を延長・伸長できることにより、開始申立を免除される事情の存否を調査できるようになり、ひいては、本制度の活用の促進につながると考えます。

「第2 4.(4)手続のIT化」に対する意見

(意見の内容)

 裁判手続のIT化の検討結果等を踏まえて、本制度の手続のIT化について検討すべきです。また、対象消費者と特定適格消費者団体間の手続のIT化を推進する場合、それにかかる費用が必要となりますので、行政による財政的な支援等も講ずるべきです。

(意見の理由)

 手続のIT化により、対象消費者にとっての利便性の向上や特定適格消費者団体にとっての効率性の向上、そして事務負担の軽減等につながると考えるからです。

「第2 4.(5)簡易確定手続における事件記録の閲覧等のあり方」に対する意見

(意見の内容)

 報告書の内容に賛成です。

(意見の理由)

 対象消費者のプライバシーが保護される中で安心して本制度の手続に参加できるようになることが、本制度の活用の促進につながると考えるからです。

 

 

「第2 4.(6)対象債権にかかる金銭の支払方法及び支払いに要する費用」に対する意見

(意見の内容)

 報告書の内容に賛成です。

(意見の理由)

 個々の対象消費者への振込に係る手数料は、共通義務確認の訴えにおける請求対象に含めて捉えることが当然だと考えるからです。

「第3 特定適格消費者団体の活動を支える環境整備」に対する意見

(意見の内容)

消費者団体訴訟制度の実効的な運用を支える者を指定法人と位置づけ、行政からの必要な支援を行うべきであること、また(特定)適格消費者団体の事務負担の軽減や、特定認定を目指す適格消費者団体への補助金交付等の支援を行うべきであると考えます。

さらには、報告書に書かれていませんが、特定適格消費者団体も適格消費者団体も存在していない地方・地域の消費者団体への行政からの支援も行われるべきであると考えます。

(意見の理由)

報告書には、(特定)適格消費者団体(以下、単に団体という)が主体となり運営する消費者団体訴訟制度の意義を位置づけ「社会的インフラ」であることが明示されています。本制度に期待される少額多数被害の回復という役割においては、とりわけ個々の損害額が少額になる場合、団体側の事務コストの問題は環境整備だけでは解決困難であり、団体の負担を補填するような施策が必要であると考えます。

この点を踏まえると、消費者団体訴訟制度の実効的な運用を支える者を「指定法人」と位置づけ、行政からの必要な支援を行うことは、その施策の一つとして考えられます。ただし、「指定法人」をどのように規定し、その役割についてどこから実現していくのかについては、(特定)適格消費者団体との十分な意思疎通を行いながら進める必要があると思いますが、特定適格消費者団体も適格消費者団体も存在していない地方・地域の消費者団体や地方公共団体とも意見交換等を行いながら、「指定法人」制度を導入すべきであると考えます。

また、消費者被害回復制度の実効性をより向上させるためには、担い手となる特定適格消費者団体への支援や、さらに認定団体が増えていくことが必要であることは多言を要しません。消費者団体訴訟制度等への理解促進や、(特定)適格消費者団体の事務負担の軽減等の支援とともに、特定・適格認定を目指す消費者団体への補助金交付等の支援を行い、(特定)適格消費者団体を増やすべきであると考えます。

消費者保護基本法から消費者基本法へ改正され、新法第8条において「消費者団体は、消費生活に関する情報の収集及び提供並びに意見の表明、消費者に対する啓発及び教育、消費者の被害の防止及び救済のための活動その他の消費者の消費生活の安定及び向上を図るための健全かつ自主的な活動に努めるものとする。」と定められ、旧法に比べ、消費者団体の役割がより一層重視されております。そのような流れの中で、消費者団体訴訟制度も導入され、(特定)適格消費者団体の役割が重要になってきているものと考えます。

現在、全国に適格消費者団体は21都道府県に22団体あり、また特定適格消費者団体は東京都、埼玉県、大阪府、北海道に4団体あります。特定適格消費者団体も適格消費者団体も存在しない県は26県あります。全てではありませんが、この26県はほぼ過疎地域と重なっているように思われます(過疎関係市町村都道府県別分布図を参照)。

消費者団体訴訟制度がさらに広がりを見せ、より活用されるようになるためには、特定適格消費者団体も適格消費者団体も存在しない地方・地域の消費者団体と、どのような具体的な連携協力関係を構築していくのかが検討されなければならないと考えます。「社会的インフラ」としての消費者団体訴訟制度へのアクセスが困難な地方・地域があるとすれば、消費者被害が適切かつ迅速に救済される権利が、上記のような地方・地域間格差により保障されていないという問題にもなりうると考えますので、この点、検討してくださるようお願いします。

「第4 1.破産手続との関係」に対する意見

(意見の内容)

 破産手続との関係では何らかの制度的手当てが必要であると考えます。

(意見の理由)

現行制度では、事業者が破産状態に至った場合に特定適格消費者団体は手続を終了しなければならず、簡易確定手続に参加した消費者がいたとしても、何ら支援することもできないので、制度的な手当てにつき検討されるべきです。

「第4 2.検討会の検討対象外とした事項」に対する意見

(意見の内容)

 訴訟外での協議の促進やオプトアウト方式の導入については、今後の課題とすべきです。

(意見の理由)

 今回の検討会では、特に急ぎ対応する必要があるものを中心に検討されるべきであると考えるからです。

以上

 

本意見書の差出人

  消費者ねっとしまね  代表 朝田良作(島根大学名誉教授)

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